05/27/2003
「よろしかったらどうぞ・・」
買い物を終えてちょっと一息・・と入ったコーヒー店でのこと。
そこは、私のような女性ひとりの客でも気軽に入れて、
ゆったりとおいしいコーヒーが楽しめるお店です。
オムレツや生野菜などの具をたっぷりはさんだトーストセットをたのんだ私に、
ウエイトレスさんが何やら持ってきてくれました。
広げてみると、ハンドタオルよりはひとまわり大きめの、四角いタオル。
手を拭くものかしら？不思議顔の私に、
「お膝におかけになって下さい」 と、にっこり笑って広げてくれました。
ようやく分かりました。ひざかけです。
トーストの細かいくずや、中にはさまった具で洋服が汚れないように・・
との配慮だったのです。
表地には、真ん中に赤いコーヒーミルがどんと大きく描かれています。
この店のトレードマークです。
そのまわりをぐるりと、ミルクコーヒー色の小花が取り囲んでいます。
・・いいえ、花ではありませんでした。
よく見ると、なんと、小さな小さなコーヒー豆です。
縁のほうまでぎっしり。かわいいコーヒー豆が満開です。
なかなかしゃれています。
肌触りもよく、味気ない白いナプキンより気がきいています。
「どうもありがとう」
嬉しくなって、思わず大きな口を開けてトーストサンドをかぶりつきました。
口の端にオムレツのケチャップがついても気にしません。
子供のころにもどったみたいです。
がぶり、がぶり。いつもよりおいしいみたい。
膝の上を気にすることなく、思う存分焼きたてのトーストの味を楽しみました。
最後は、肉厚の白いカップに入ったこの店自慢のコーヒーをゆっくり飲んで、
大きく息をつきました。
「ふうっ、マンゾク、マンゾク」
大満足です。
ふと膝の上を見て、もう一度、なるほど・・とうなりました。
ひざかけをタオル地にしている意味がわかりました。
つるつるしたナプキンでは、パンくずは床や椅子の上に落ちてしまいますが、
タオル地だと生地にひっかかって、ちゃんと膝の上におさまっています。
参りましたと脱帽です。
細かい心づかいにすっかり気をよくして、私は席を立ちました。
「おいしかったです。ごちそうさま・・」
「ありがとうございました」
おなかも気持ちもあったかくなって、日が傾いてきた三宮の街を後にしました。
そのお店の名前は、にしむら珈琲店といいます。
神戸を中心にして、御影や芦屋、大阪のビジネスパークなどにも何件かあります。
ほっとしたい時、私が立ち寄るお店です。