02/21/2004
日曜の夜のこと。
昼間みんなで出かけた後、
夕飯の支度をするため、私だけ一足先に帰りました。
ガチャリ。
鍵を開けて家の中に足を踏み入れます。
しんと静まり返った真っ暗な玄関。
月の光でしょうか。
リビングの窓が青白く光っています。
ヒンヤリした空気。
新聞紙のインク様な冷たい匂い。
これが私の家？
誰もいない夜の家って、
こんなに寂しいものだったっけ・・。
私は幼い頃から、人一倍の臆病者。
そのくせ聞きたがり。
よせばいいのに知りたがり。
まったく始末に終えない恐がりだったのです。
夏休みなど、「寝れなくなっても知らないよ」と母が止めるのも聞かず、
「あなたの知らない世界」という番組などよく見たりしていました。
昼ごはん時に・・と嫌がる母に、テレビを一緒に見せておきながら、
結局一番恐いところにさしかかると、
「あかん！チャンネル変えて！」と走って逃げてしまうのですから困ったもの。
当然夜になると、廊下の突き当たりにあるトイレにも、
一人で行けるはずはありませんでした。
あれから３０年あまり。
私が今のところ存じ上げている幽霊は、
祖父と父、そして母のお三方のみ。
幸いこの面々は、私の臆病さ加減を誰よりもご存知のはずです。
「まさか、後ろから脅かすなんてことはあるまい・・」
などと、家中の灯りを全部点けて回っている私を、
「いつまでたっても変わらんなあ」
と、苦笑いしながらこの三人が見ているような気がして、
恐いような、おかしいような、
妙な気分になりました。
トイレの前で母に待ってもらっていたあの頃と。
階段の途中で何度も後ろを振り返っている今と。
久しぶりの暗闇の中に感じた心細さは、
懐かしいような不思議な切なさでした。