11/29/2003
末っ子と一緒に、散歩に出かけました。
11月も終わりの、少し風の強い日。
でも、日差しは柔らかです。
スーパーの前の自動販売機で、
娘の大好きな、QOOのりんごジュースを一本。
「ココ ニ イレテコ」と、
娘は、自分の自転車の前かごに、
大事そうにその瓶を納めました。
行く先を決めない気ままなお散歩に、いざ出発。
15分も歩いたでしょうか。
「ママ モー ツカレタヨー」
ここまで頑張ってついてきた娘も、さすがにギブアップ。
ちょうど、公園が目の前です。
「じゃ、休憩しよっか」
二人並んでベンチに腰掛けました。
晩秋の公園はおしゃべりです。
紅く色づいたオオシマザクラの葉っぱが、
風にゆれて、クスクス笑っています。
「ここまで おいで」
クルクル回っているのは、
黄色い竹とんぼのようなイチョウの葉。
足元の泣き虫どんぐりは、
踏まないでよと、
コロコロ逃げていきました。
ザワザワ、ザワワ、
フフフフ、 フフフフ。
黄金色に染まる草の波間から、
どこからともなく聞こえてくるささやき。
あれは、名残を惜しむ、虫たちのおしゃべりでしょうか。
フフ・・・・。
私たちの気配を察したのでしょうか。
ふいに、
草むらのささやきが、
ピタリと止んでしまいました。
しんとして、あたりは、水を打ったような静けさ。
さっきまで聞こえていた大通りの車の音も、
どこかの家で布団を叩いていた音も、
ワンワン吼えていた犬の鳴き声も、
不思議なくらいに一斉になくなってしまいました。
まるで、全てが息をひそめてしまったよう。
「アー オイシカッタ」
ジュースを飲み干した娘の声が、
その静寂を破りました。
隣の小学校からは、3時間目の終わりを告げるチャイム。
ほんの一瞬、時のすき間に落ちていた・・。
そんな不思議な時間でした。
「よーし、じゃ、もうひと頑張り歩こか」
私は、夢から覚めたように、
ベンチを立ちました。
「マッテー」
後ろを、娘の自転車のカラカラいう音が追っかけてきます。
私たちが去った後の公園では、
またあの楽しいおしゃべりが始まるのでしょうか。