09/02/2003
台所で夕飯の支度をしていた時のこと。
ポテトサラダの下ごしらえをしたボウルを置き、
後ろにある冷蔵庫からきゅうりを取り出して、
さあと振り向いてみると、
３歳の娘が、何やら一生懸命ワゴンの上を覗き込んでいます。
視線の先には、背伸びしてちょうどの高さにある銀色のボウル。
爪先立ちで、ワゴンのふちにぶら下がるようにして必死です。
いったい、何をそんなに一生懸命見ているのでしょう・・・。
私も娘の目の高さまで膝を曲げて、そうっと後ろから覗き込みました。
「アッ、ママ、ママ」
ボウルに映った娘と目が合いました。
笑いかけると、私の目も口も、ぐにゃりと大きく曲がります。
娘は大喜び。
キャッキャとはしゃいでぴょんぴょん飛び跳ねると、今度は頭が大きく伸びました。
「何してんの？」
ダイニングで本を読んでいた一番上の娘がその声を聞きつけてきました。
「ボウルに映った顔が、色々ゆがんで面白いみたいやねん・・・」
「オイデ、オイデ」
末娘が誘って、お姉ちゃんも、いないいないばあ。
長く伸びる指や大きい鼻でいっぱいになった顔。
三人で大笑いです。
あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。
近づいたり遠ざかってみたり。
ボウルの中では、不思議な三人が踊っています。
１メートルに満たない娘の視線の先には、
思いがけない世界が広がっていました。
その日の夕飯は、いつもよりちょっぴり遅くなりましたが、
さっきの様子を話す長女の明るい声で、食卓はとても楽しい雰囲気となりました。
膝を折り曲げただけで見えてきた子供の世界。
１メートル６０センチから見下ろしていた時には、知らなかった世界。
子供の視線の先には、楽しい発見がありました。
たまには、ちがった高さから。
新しい世界が開けてきそうです。