05/22/2003
「あ、今年も来てくれた・・」。
毎年５月のはじめころ、我が家にツバメのお客様がやってきます。
喉には紅い蝶ネクタイ。つやつや光る燕尾服着用。なかなかのおしゃれさんです。
玄関の上、ちょうどお風呂と洗面所の換気口の上に１個ずつ、その反対側の軒先に１個、合計３つ。
土とわらを見事に積み重ねて作ったそれらの巣のどれかに、つがいの夫婦がやって来て、
「ゴブサタしてます。今年もお世話になります」
とばかりにチュウピチュウピ鳴き始めます。
ツバメたちが初めてやってきたのは、この家が建った５年前。
「玄関先で何やらやってるな・・」と思ったら、翌日の夕方にはきれいに巣が出来上がっていました。
その早いこと、早いこと！
ちょうどその時遊びに来ていた義母が
「ツバメは幸せを運んできてくれンねんよ」と言うのを
「へえ、そうなの？」と何気なしに聞き流していましたが、その翌年、思いがけず三女を授かりビックリ。
どうやらこの子は、コウノトリではなくツバメに連れてこられたようです。
ツバメサマ様、大明神です。
ツバメの夫婦は共働き。もちろん、子育てにはお父さんも全面的に協力です。
卵も代わる代わる温めているようです。
お母さんがマタニティブルーにならないよう、
「たまには、ハエでも追ってゆっくりしといで・・」なんて言ってるのでしょうか。
生まれたばかりのヒナをねらってカラスがやってきた時の様子は、すごいものでした。
自分たちより数倍大きなカラスに向かって、何度も何度も急降下を繰り返す２羽。
その迫力とスピードたるや、しつこいと評判のカラスもシッポ（尾っポ？）を巻いて
退散せざるをえませんでした。バンザイ！
両親の惜しみない愛情をうけてすくすく育ったヒナたちが、
巣からはみ出るほど大きくなるまでほぼ１ヶ月。
そろそろ巣立ちのときです。
「ッピッピテュルルル・・・」。
親たちが、しきりにヒナたちを巣の外に誘います。
不安げにぴいぴい鳴く子供たち。
「大丈夫、大丈夫。ここまでおいで」と遠くで見守りながら、根気よく待つ親。
「・・ああはできないなあ・・」とため息をつく私。
たかがツバメとあなどるなかれ。この姿勢こそ子育ての極意。頭が下がります。
１,２日、近所で飛行訓練を繰り返しては夕方帰ってきていたかと思うと、
ある日突然彼らの声は聞こえなくなります。
旅立ちです。
やれフンがきたない、えさのハエが玄関先に落ちていると騒いでいた子供たちも、
「行っちゃったね・・」と少し寂しそうです。
玄関を開けるかちゃりという音に反応して、ピイピイいっせいにクチを開けていたヒナ。
大きくなったそのヒナ達に押しやられて、夜、一人寂しく巣の外で寝ていたお父さん。
最後の日、まるで挨拶してくれるようにぐるぐる上を飛んでいたお母さん。
また来年も、この青い家を目指して飛んできてネと南の空にむかってつぶやきました。
つばめの姿を見かけなくなると、神戸にもそろそろ梅雨の季節がやってきます。