05/20/2003
神戸に住みはじめたのは、結婚する２年前、
仕事をしていたころからですから、もう１２年になるでしょうか。
初めてその街並みを阪急電車の中から見たときは、とてもとまどいました。
六甲山にしがみつくように建っている家々。くねくねとその間をぬうように走る坂道。
自転車でどこまでも走っていける北陸の平野で育ってきた私には、それだけで
「異国」の 雰囲気でした。
日本でありながら、日本ではない・・・。稲穂をそよがせる風とは別の風が吹く・・・。
そんな不思議なかんじのする街に思えたのです。
空気の色も違いました。
私の知っている雪国の空気は、肌にしっとりとまとわりつくような薄紫色。
ここ神戸の空気は、軽やかでからりとした鮮やかなブルー。
ひとつ明るいトーンだったのです。
１２年前は、何もかもが私の故郷とはまるで違うと感じた街、神戸。
ところがです。
どうしたことでしょうか。最近、この街を歩いていると、
ふと幼い頃を思い出すことがあるのです。
「あ、いつだったか、こんなことがあった・・」。
「この風景、どこかで見たぞ・・」。
突然です。
何の脈略もなく、ふいに。
しかも、その回数は、郷里に帰った時よりも、断然多いのです。
神戸独特のハイカラな風景の中で感じる、せつないような懐かしさ。
それは私を、泣きたいような気持ちにさせるのです。
石造りのモダンな建物は、祖母と一緒に行った銀行の匂い。
港のガス燈の淡い光は、父に肩車されて見たお花見の紅いぼんぼり。
母の手作りのスカートをはいたおかっぱ頭の私が、あの急な坂道を駆け下りてきそう・・。
いつのまにか、神戸の街並みの中に、幼い私の姿がすっぽりと納まっているのです。
そんな時、私のまわりをやさしく包む神戸の空気は、青墨をほんの一滴たらし
こんだような薄墨色です。
故郷の色に似ているのです。
やっぱり神戸は不思議な街です。
いろんな色をもっています。
これから、どんな色に出逢えるのでしょう？
そして、私のＤＮＡをどんな色に染めてくれるのでしょう？
楽しみにしている私です。